トップメッセージ

変化する時代の中で進化を続け、
「世界の人々の笑顔」を創造します。

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代表取締役会長 兼 CEO
十二代 國分勘兵衛

変わらない社是「信用」「帳目」とともに

国分グループは、創業期より「信用」を社是として歩んできました。信用を守り続けていくため、その時代に合わせた会社の決まりを成文化した「帳目」があり、現在は「平成の帳目」が国分行動憲章として存在しています。

私たちを取り巻く環境はコロナ禍に加え、ロシアによるウクライナ侵攻や米中対立など、先行きが見通しにくい状況にあります。先進国では少子高齢化と出生率低下が進む一方、途上国では人口増加が続くという不均衡が世界の食糧事情に大きな影響を与えます。また、気候変動やそれによって多発する自然災害は食糧生産に影を落とします。

不確実性の高まる時代となりますが、世の中は変わり続けるものであり、チャンスは常にそうした「動き」の中にあります。健康や環境をキーワードにした食が広がり、新たな消費トレンドとなるのもその一例です。社是「信用」と「帳目」とともに、私たちが経営のよりどころとする企業理念「継続する心・革新する力」は、変化の中に進化を求めていく当社の信念を表しています。

「縁の下の力持ち」としての卸売業

国分グループでは2022年に公表したSDGsステートメント「300年間紡いだ商いを、次世代に繋げていく。私たちは食を通じて世界の人々の幸せと笑顔を創造します」を企業理念のサブワードに定めました。現在推進する第11次長期経営計画はこれを重要な基盤とし、「共創圏の確立」をコンセプトに、経営とサステナビリティを統合する姿勢を明確にしています。

こうした方針は、当社グループのこれまでの歩みの延長線上にあるものです。私たちはそれぞれの時代に合わせた仕事を通して、サステナビリティを形にしてきました。メーカーと小売業の中間に立ち、生産者から生活者までの結節点となり、つないでいく。多様なニーズのマッチングを図り、地域にある優れた食を、欲しい人・必要な人に届けていく。これは、まさにサステナビリティ産業であると考えています。

2022年には、原材料・エネルギー価格の高騰を受け、食品業界でも価格改定が進みました。これまで日本では長年にわたり物価上昇が抑えられてきましたが、同時に人々の所得水準も抑えられてきました。モノには原価があり、人の手が加わって付加価値を高めていく以上「安さ」の追求はどこかに犠牲を強いてしまいます。生産者がもうけを出せない、従業員の給与が上がらないというのは顕著な例でしょう。サプライチェーン上の誰もが豊かに暮らせる社会の実現に向けて、私たち卸売業が果たすべき役割は大きいと思っています。「縁の下の力持ち」として謙虚に、しかし着実に、お取引先の皆さんと共創圏を構築してまいります。

人を育て、生かし、「コト売り」を加速

今日、バリューチェーンの中で、卸売業として、重要性を増すのが「コト売り」の事業です。卸売業は、需要と供給を的確に捉え、つなげていくという役割をもっています。商流を見極め、物流を整備し、人と人との信頼関係のもと食品流通を支えるソリューションを築いていくことが私たちのビジネスです。そのためには、事業に携わる一人ひとりが経験を重ね、マーケティングの感度を高めていく必要があります。今日ではAIの進化もめざましく、DXはさらに加速していきますが、本当の意味で価値創造を担うのはやはり人です。

第11次長期経営計画では、やりがいや成長する楽しさへの意識を強め、従業員の「仕事における幸福度向上」を重点施策の一つとして掲げています。一人ひとりの価値観を大切にし、個人と会社のパーパスのつながりを見いだすワークショップを全社で開催しています。福沢諭吉翁の言葉、「一身独立して一国独立す」にあるように、個々人が独立し、仕事に対する価値観について考えることは極めて重要です。自分の意思で目標を設定し、自律的にPDCAを回せるようになったとき、仕事は格段に面白くなります。

また、次世代を担う若手・中堅従業員が業界全体を俯瞰ふかん視野の広さを身に付けられる研修プログラム「国分ビジネスリーダー育成カレッジ」を2018年よりスタートさせました。年齢や性別にかかわらず、それぞれが能力を最大限に発揮し、イノベーションを起こしていけるような人材施策を重視しています。

私は従業員にはいつも笑顔で一所懸命、幸せに働いてほしいと思っています。そのためには心身の健康も欠かせない要素です。従業員のウェルビーイングを実現する環境作りは経営の大切な責務の一つと考えます。

一日一日を着実に積み上げ、次の100年へ

当社の商いは江戸時代半ばに始まり、創業 311年目を迎えます。明治維新からは155年、日清、日露戦争、太平洋戦争を経て、敗戦から78 年が過ぎました。戦後の復興と高度経済成長で、社会は大きく様変わりしました。長いように見える国分の歴史ですが、振り返ってみればあっという間のことのように感じます。その時代時代で、皆が知恵を出し合い、切磋琢磨しながら一所懸命に商売をしてきて、気がついたら300年を超えていたということです。

人が生きていく限り、食のライフラインは必要とされ続けます。一方で市場は絶えず変化し、次の100年を見通すことは容易ではありません。しかし、未来は突然生まれるのではなく、過去から現在へのつながりの上にあります。足元の変化をしっかりと把握すれば、「すでに起こった未来」はいつも身近に存在するでしょう。今日の一日、明日の一日を大切に積み重ねながら、私たちは「世界の人々の幸せと笑顔」があふれる未来に向けて、食を通じた貢献を続けていきます。

多様な共創圏パートナーとの連携のもと、
食の新たな価値を創出し、持続可能な未来に貢献します。

代表取締役社長執行役員 兼 COO 國分晃の写真
代表取締役社長執行役員 兼 COO
國分晃

4つの価値創造目標の達成に向けて

国分グループは 2022年、第11次長期経営計画の2年目を終了しました。2016 年から進める卸基盤再構築や物流拠点の整備など、全社一丸となって食のインフラを維持継続してきた結果、コロナ禍の厳しい環境下でありながらも、2期連続で最高益を更新することができました。

第11次長期経営計画で掲げる「顧客満足度No.1」「共創圏の構築・拡大」「コト売り比率の向上」「仕事における幸福度向上」の4つの価値創造目標においても、さまざまな進展がありました。特に従業員の「仕事における幸福度向上」は当社の成長の原動力になりました。

従業員がやりがいをもって働くことのできる環境整備に注力してきたことが、2022年の結果を下支えしたと考えています。

また2022年からは、従業員個々の価値観(パーパス)と会社の価値観(国分スタンス)のつながりを見いだす全社的なワークショップを開催しており、グループ従業員の2割を超える1,300名がすでに受講しています。私も参加しましたが、一人ひとりが自分自身の仕事の目的を見つめ直すきっかけになっていると感じました。社初の女性執行役員を中心に、個々が力を発揮できる仕組み作りを加速していきます。

「顧客満足度No.1」では、これまでお得意先やメーカー約2,000社に対し、営業力強化のためのCS(顧客満足度)調査を実施してきました。また、当社が考える「顧客」とは生産者から生活者までを広く含んでいます。そのため、サプライチェーン上に存在するすべての人を尊重し、その満足度を向上させていく取り組みが欠かせません。2022年6月に策定した「国分グループ人権方針」もまた、私たちが 1712年の創業時から日々の商いの中で当たり前に貫いてきた、あらゆるお客さまへの姿勢を反映したものです。

共創圏の構築・拡大」では、これまで築いてきた共創圏パートナーとの多様な取り組みが全国で広がっています。「かごしま障がい者共同受注センター」との協働もその一例です。地元のスーパーマーケットチェーンの賛同を得て、障がい者の方々が生産した農作物や加工品を地産地消コーナーで販売したところ、生活者から大きな反響をいただき、取扱店を拡大するという好循環を生み出すことができました。これまで販路が限られていたことで課題となっていた廃棄を減らしながら、生産者のやりがい向上を実現し、また耕作放棄地の問題解決にも貢献しています。このような取り組みが全国各地で行われています。

「コト売り比率の向上」については、従来、各小売店が個々に行っていた野菜や魚、肉など生鮮品のカット・袋詰めを中心としたバックヤード業務を当社が一括して受託することで、非可食部分の有効利用や小売店の作業効率改善に貢献するなど、卸の役割をさらに進化させています。

  • 国分スタンスとは、社是・企業理念・平成の帳目を大切にし、社会の一員として活躍できるように努め、「世の中、食産業、従業員」三方よしの実現を目指していくこと。

重要事項(マテリアリティ)の取り組みを着実に推進

国分グループでは、事業を通して社会課題を解決していくため、私たちがなすべきことを重要事項(マテリアリティ)として特定しています。各領域で着実にPDCAを回していくために、2030年までに達成すべき目標(KPI)を定めており、2022年も取り組みを進めてきました。

環境や社会に配慮した商品群として、第11次長期経営計画より注力しているのが「サステナブルカテゴリー」の取り扱いです。このカテゴリーに寄せられるお取引先からのご要望は非常に強く、サステナビリティを中核に据えた長期戦略により、先を見通した事業展開ができたと自負しています。2022年にはグループ全体で65億円弱の売上規模となり、2030年までに100億円規模とする目標に向けて、大きく前進できました。

地球環境の保全に関しては、食品を扱う企業としてプラスチックの廃棄物削減を重要なテーマの一つと考えています。私たちは毎年多くの展示会を開催しており、2022年にはそこで使用するカトラリーの64%を紙製のものに変更しました。2030年までに展示会などで使用するワンウェイプラスチックをゼロ化にする目標を前倒しし、2025年までの達成を目指していきます。

一方、温室効果ガスの削減では、物流に関する排出量の課題があります。当社の物流はほとんどが委託配送である以上、私たちが一方的な施策を講じることはできません。しかし、決して後回しにできない分野であり、物流事業者との連携を一層深めていきます。

また、従業員一人ひとりが仕事に誇りとやりがいをもつためには、「人財」に関わる取り組みも重要です。国分グループでは 2016年に抜本的な人事制度改定を行っていますが、2022年にはさらに、チャレンジを後押しする制度に進化させました。高い目標を掲げること自体の難しさと価値を認め、そこに向けて尽力する従業員を適正に評価しています。新入社員も、実力次第では入社後、最短11年で上級職に昇格可能とするなど、2030年までに30歳代の上級職を10%以上にする目標に向けて着実に歩みを進めています。

サステナビリティと経営を重ね合わせた歴史のもと「食のマーケティングカンパニー」として次の進化へ

私たちを取り巻く経営環境の変化は激しく、原材料費やエネルギー価格、人件費など、製造原価の高騰で、食品の値上げは今後も続くことが見込まれます。少子高齢化の加速が食に与える影響も大きいでしょう。外食・中食・内食の垣根が低くなり、従来の食品カテゴリーの境界が曖昧になる一方、日常とハレの消費の二極化も進みます。こうした状況を総合的に捉え、私たちは「食のマーケティングカンパニー」として戦略を実行していかなければなりません。

「未来は予測不能だが、すでに起こった未来は体系的に見つけることができる」とは、経済学者ピーター・ドラッカーの言葉です。随所に出現する小さな未来をいかに察知し、対応していくか。そこに組織の力が問われています。60万アイテムを扱い、国内外に3万5,000社のお取引先をもつ国分グループにはあらゆる情報が集まります。真の意味で情報の価値が見直される今、当社ならではの立ち位置を生かして組織の「暗黙知」を「形式知」に変え、「実践知」として新たなイノベーションを創出する循環を作り上げていきます。

幅広いパートナーとの連携は不可欠ですが、財務的な連結にこだわることなく、それぞれの独自性を尊重しながら知見を結合した協業体制を築いていきます。私たちが重視する「共創圏」のコンセプトは、まさにこうした考え方に基づくものです。

2020年に策定したSDGsステートメント「300年間紡いだ商いを、次世代に繋げていく。私たちは食を通じて世界の人々の幸せと笑顔を創造します」には、長期視点からの当社のありたい姿が描かれています。これは行動憲章「帳目」の内容を、SDGsのフレームワークで改めて整理したものであり、創業以来受け継いできた当社の想いとサステナビリティへの取り組みは重なり合っています。国分グループは、多様な共創圏パートナーとともに食の新たな価値創造を続け、持続可能な社会の実現に貢献していきます。